【町田市の税理士が解説!】消費税の「簡易課税」はいつまでに出す?~2割特例を活用中の事業者が使える1年間の猶予期間
インボイス制度の開始に伴い、免税事業者から課税事業者へと移行した個人事業主・中小法人の多くが活用してきた「2割特例」。この非常に強力な税負担軽減措置も、いよいよ制度上の終了の足音が近づいてきました。
(※個人事業主は3割特例への移行、法人は原則として通常課税への移行)
2割特例が終了した後の選択肢として、多くの事業者が検討するのが「簡易課税制度」です。しかし、消費税の届出には「事前に提出していなければ適用できない」という厳格なルールが存在するため、切り替えのタイミングを逃してしまうと、思わぬ税負担に見舞われる可能性があります。
こうした事業者の混乱や手続き漏れを防ぐため、「前期に2割特例を使っていた場合、簡易課税の届出期限を当期の期末まで猶予する」という特例が設けられています。本記事では、この手続きの特例について、実務上の注意点を交えて分かりやすく解説します。
そもそも「簡易課税」とは?
まずは「簡易課税制度」が、そもそもどのような仕組みなのかを簡単におさらいしておきましょう。
消費税の計算は、原則として「お客様から預かった消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を差し引いて、その残りを国に納めるという形をとります。しかし、この原則通りの計算を行うには、日々の領収書やレシートをインボイスのルールに従って細かく分類し、集計しなければならず、大変な手間がかかります。
そこで、売上高が一定以下の小規模な事業者の事務負担を減らすために用意されたのが「簡易課税制度」です。
・実際の経費に関わらず、売上だけで税金が決まる
簡易課税の最大の特徴は、「実際にいくら経費を支払ったか」は一切関係ないという点で、「売上時にお客様から預かった消費税」に対して、国が業種ごとにあらかじめ定めた一定の割合(みなし仕入率)を掛け算して、機械的に納める税金を計算します。
業種は以下の1種から6種に分類されており、それぞれの「みなし仕入率」は次の通りです。 表1「簡易課税制度の事業区分の表」

(引用:国税庁「No.6509 簡易課税制度の事業区分」)
2割特例から移行する場合の「提出期限の特例」
・簡易課税制度の「原則的な提出期限」
簡易課税制度の適用を受けるためには税務署に対して「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があり、その提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで。とされています。
たとえば、個人事業主が「令和9年分」から簡易課税を使いたいと考えた場合、原則的なルールに従うと、その前の年である「令和8年12月31日まで」に税務署へ届出書を出しておかなければなりません。期が始まってから「やっぱり今期は簡易課税にしよう」という事は出来ません。
・2割特例から移行する場合の「提出期限の特例」
しかし、2割特例の適用を受けていた事業者については、例外的に提出期限の特例が認められており、次の期から簡易課税へ切り替えたい場合、期が始まった後であっても「適用したい期の末日まで」に税務署へ届出書を提出すれば、その期からの適用が認められるのです。
個人事業者であれば12月31日、法人であればその期の末日までに届出の提出が完了していれば問題ありません。期が始まってから、実際の売上や経費の動きをじっくりと見極めた上で、簡易課税にするかどうかの判断を下すことができる非常に心強い救済策となっています。
実務上の注意点
・期限は「申告(税金を払う)タイミング」ではない
よくある勘違いとして申告時と一緒のタイミングで届出を提出すれば間に合うという点です。あくまで提出期限はその期の末日までになるので、申告日と同時に届出を提出しても、今回の特例は受けられないので、注意が必要です。
・原則課税の事業者は適用できない
この提出期限の特例が使えるのは、「前期が2割特例の事業者」になります。 「インボイス事業者だから猶予される」わけではありません。つまり、以前からずっと原則課税で申告していた事業者などは、当然ながら原則通り「前日までの事前提出」が必要となります。
・簡易課税の「2年縛り」は継続する
意外と忘れやすいのが、2年縛りです。簡易課税は、一度選択すると原則として2年間は原則課税に戻ることができません。
期末になって慌てて簡易課税の届出を出したものの、翌期に多額の設備投資(建物の購入や高額な車両の購入など)を行う予定が入り、「原則課税にしていれば消費税の還付を受けられたのに、簡易課税のせいで還付が受けられない」ということが起きないように、届出を出す際は、慎重に確認してください。
まとめ
2割特例から簡易課税への移行時に使える「当期末までの提出期限の猶予」は、手続きの遅れによる不利益を防ぐための非常に重要な救済措置です。この猶予期間があるからこそ、その年の売上や経費の状況を秋口や冬の手前までしっかりと見極めた上で、「原則課税のままいくか、簡易課税に切り替えるか」のベストな選択をすることが可能になります。
「自分の場合はいつまでに、どちらの届出を出すのが一番得なのか」について、少しでも不安がある場合は、期限ギリギリになって慌てる前にぜひ一度、町田市を拠点とする小池税理士事務所までご相談ください。事前のシミュレーションも含めて、最適な手続きをサポートいたします。

