【11月は過重労働解消キャンペーン】中小企業が今すぐ見直すべき「労働時間の適正把握」と労務リスク対策

11月は厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」です。これに合わせて全国の労働基準監督署では「過重労働解消キャンペーン」が実施され、長時間労働が疑われる事業場などを対象に重点的な立ち入り調査(重点監督)が行われます。

「うちは中小企業だから」「アットホームな職場だから大丈夫」と油断してはいませんでしょうか。労基署の監督指導で指摘を受けやすいのが、日頃の「労働時間の管理方法」です。 本記事では、厚生労働省が示している重点確認事項を整理した上で、企業に強く求められる「労働時間の適正把握」の具体策と、放置することで生じる経営リスクについてわかりやすく解説します。

労働基準監督署が重点的に確認する「4つのポイント」

過重労働解消キャンペーン期間中、労働基準監督署が特に注意して確認する項目は以下の4点です。これらは労務管理を行う上で、企業が最低限クリアしなければならない必須事項と言えます。

  1. 36協定(サブロク協定)の遵守

時間外労働や休日労働が、あらかじめ締結・届出している「36協定」の上限範囲内におさまっているか。法違反がある場合は是正指導の対象となります。

  1. 賃金不払残業(サービス残業)の有無

残業手当や深夜手当が正しく計算・支払われているか。名ばかり管理職や手当の不適切な運用による「隠れサービス残業」も含めて確認されます。

  1. 労働時間の適正な把握

タイムカードやPCのログなどに基づき、始業・終業時刻が正確に記録・管理されているか。

  1. 長時間労働者への健康確保措置

月80時間を超えるような長時間労働者に対し、医師による面接指導や労働時間の短縮措置などが確実に講じられているか。

これら4点の中でも、すべての基本となり、かつ現場で運用漏れが起きやすいのが「3. 労働時間の適正な把握」です。

なぜ「出勤簿の〇印」だけではNGなのか?

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、会社が講ずべき具体的な措置が明確に定められています。

単に「出勤簿に印鑑を押す」「出勤日に〇をつける」といった方法だけでは、労働時間を適正に把握しているとはみなされません。

会社には、従業員の「労働日ごとの始業時刻および終業時刻」を分単位で確認し、記録することが法的に求められています。業務を開始した時刻と終了した時刻を客観的に記録できて初めて、「労働時間を把握している」と言えるのです。

自社は大丈夫?よくある不適切な管理パターンと改善策

日頃の労務管理において、特に注意が必要な「3つのケース」をご紹介します。自社の状況と照らし合わせてみてください。

ケース1:自己申告制を採用している場合

タイムカードではなく、従業員本人の自己申告(日報や申告書)で勤務時間を管理しているケースです。

  • 注意点:自己申告された時間と、実際の労働時間(PCのログイン/ログオフ履歴や建物の入退館記録など)に大きなズレがないか確認する必要があります。
  • 改善策:必要に応じて実態調査を行い、乖離がある場合は時間を補正してください。また、「申告時間と実際の滞在時間がズレている理由」を報告させる運用にしている場合、その報告内容が形式的なものになっていないか(残業しづらい雰囲気から嘘の報告をしていないか等)のチェックも不可欠です。

ケース2:残業申請システムとタイムカードを併用している場合

「タイムカードの記録」とは別に、「事前または事後による残業申請」を受けて時間外労働を管理しているケースです。

  • 注意点:タイムカードには「19:30退社」と記録されているのに、残業申請が「30分(18:30まで)」しか出されていないといった「乖離(ズレ)」が頻発していませんか?
  • 改善策:申請された時間よりもタイムカードの記録が長い場合、申請漏れや勝手な自己都合滞在(私用など)がないか事実確認を行い、正しく残業時間をカウントする運用へ改めましょう。

労働時間の適正把握を怠る「3つの経営リスク」

「少し管理がズボラなだけ」と放置していると、将来的に会社へ大きな損害を与えるリスクに発展します。

  • リスク1:未払い残業代の遡及請求(法的リスク)

 現在、未払い残業代の請求権消滅時効期間は「3年」となっています。過去3年分にわたって全社的に不適切な時間管理を行っていたことが発覚した場合、数千万円規模の突発的な支払いが発生し、会社のキャッシュフローを直撃する恐れがあります。

  • リスク2:労働基準監督署からの是正勧告と公表

 是正指導や是正勧告を受けると、対応に膨大な労力と時間を取られます。悪質な違反と判定された場合には企業名が公表され、社会的信用が失墜するケースもあります。

  • リスク3:従業員のメンタルヘルス不調と離職

長時間労働が可視化されない環境では、過労やメンタル不調による休職・離職が増加します。特に採用難が続く中小企業にとって、人材の流出や採用ブランドの悪化は死活問題です。

【簡単チェックリスト】自社の労務管理を点検してみましょう

この機会に、以下の項目をご確認ください。1つでも「いいえ」がある場合は、早急な改善が必要です。

  • [ ] 従業員ごとの「始業時刻」と「終業時刻」を毎日記録しているか?
  • [ ] タイムカードやPCログの時刻と、給与計算上の労働時間にズレがないか?
  • [ ] 残業申請の時間と実際の滞在時間に乖離がないか確認しているか?
  • [ ] 36協定で定めた特別延長時間(月45時間超など)に達しそうな社員を事前に把握できているか?
  • [ ] 月80時間を超える残業を行っている社員に対し、面談等の配慮を行っているか?

まとめ:適正な労働時間管理は「会社を守る第一歩」

勤怠管理システムの導入やルールの厳格化は一見面倒に思えるかもしれませんが、客観的で適正な労働時間管理を行うことは、従業員の健康を守るだけでなく、企業自身を未払い残業代リスクや労務トラブルから守る防波堤となります。

勤怠管理ルールの見直しや、残業代計算の適正化、36協定の再確認など、労務・税務に関するご不安や課題がございましたら、ぜひお気軽に町田市の小池税理士事務所までご相談ください。貴社の持続的な成長をしっかりとサポートいたします。