【町田市の税理士が解説!】「たまたま土地を売った」ときの節税対策!~課税売上割合に準ずる割合の承認申請書とは?

会社の土地を売却した際、適切な手続きを行わないと消費税の納税額が大幅に跳ね上がってしまうケースがあることをご存知でしょうか。

 消費税の計算において土地の売却は「非課税売上」という扱いになります。そのため、土地を売却すると会社全体の売上に対する非課税割合が一気に高くなり、支払った消費税の計算をする際の「課税売上割合」が極端に低下してしまいます。

 その結果、本業の取引内容や日常の経費は何も変わっていないのに、計算のルール上「たまたま土地を売っただけ」で納税額が大幅に跳ね上がってしまうのです。

 国もこうした不利益を認識しており、救済措置として「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」という特例制度を用意しています。 土地を売却した期でも、この制度を正しく活用すれば本来の適切な税額に抑えることが可能です。今回は、制度の仕組みと知っておくべき手続きの注意点を解説します。

課税売上割合とは?

本題に入る前に、消費税の「課税売上割合」の意味と、原則課税における基本的なルールを確認しておきましょう。

 課税売上割合とは、会社の総売上高のうち、「消費税がかかる売上(課税売上)」がどれくらいの割合を占めているかというものです。

【課税売上割合の計算式】

課税売上割合 = 課税期間中の課税売上高(税抜)÷課税期間中の総売上(税抜)

 また消費税の計算は原則として「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて納税額を求めます。このとき「年間の課税売上が5億円以下」かつ「課税売上割合が95%以上」であれば、支払った消費税の全額(100%)をそのまま控除できるという特例ルールが存在し、この特例を活用している中小企業は非常に多く存在します。

課税売上割合が下がると、なぜ損をするのか?

高額な土地を売却した年だけは状況が一変します。土地の売却は消費税がかからない「非課税売上」に分類されるため、計算式の分母(総売上高)だけが膨らみ、課税売上割合が一気に95%未満になってしまいます。これにより「全額控除」の要件(95%以上)から外れ、事務所の家賃や通信費、経理ソフトの利用料といった「課税売上にも非課税売上にも共通してかかる経費(共通対応仕入れ)」については、課税売上割合を掛けて計算しなければならなくなります。

 ただ、土地を売却した期に「消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出し、承認を得ることで、今までの課税売上割合で消費税を計算することが可能になります。この手続きを行うことで、土地の売却という「たまたま発生した特殊な取引」の影響を除外できるため、以前と変わらない本来の事業実態に合わせた税額に抑えることができるのです。

実際にどのくらい税負担が変わるのか

では、実際に「申請書を出さなかった場合」と「承認を受けて適用した場合」で、どれほど納税額が変わるのかを具体的な数値で比較してみましょう。

【前提条件】

・本業の課税売上: 1億円(預かった消費税:1,000万円)

・土地の売却額: 1億円(※非課税売上)

・共通経費の支払消費税: 400万円(※事務所家賃や管理費など)

・前年の課税売上割合: 95%

【申請書を提出しなかった場合(通常の計算)】

課税売上割合: 1億円(課税売上)÷ 2億円(総売上)= 50%

・控除できる消費税額:400万円 × 50% = 200万円

・納める消費税額:1,000万円 - 200万円 = 800万円

【「準ずる割合」の承認を受けた場合(特例の計算)】

適用する割合: 前年実績の 95%

・控除できる消費税額:400万円 × 95% = 380万円

・納める消費税額:1,000万円 - 380万円 = 620万円

 上記のように、手続きを行うかどうかで消費税額に180万円もの差が生じることがわかります。

特例が適用される3つの要件

「課税売上割合に準ずる割合」を適用するためには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

➀土地の譲渡が単発のものであること

②土地の譲渡がなかったとした場合に、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内であること

③「課税売上割合に準ずる割合」が適用される事業年度において、個別対応方式を採用していること

「課税売上割合に準ずる割合」の計算方法

次の①または②のいずれか低い割合です。

➀前課税期間の課税売上割合

②前課税期間以前3年間の課税売上割合の平均

提出期限

課税売上割合に準ずる割合の適用の承認を受けようとする場合は、適用を受けようとする課税期間の末日までに納税地の所轄税務署に提出し、税務署長の承認を受ける必要があります。通常の届出とは違い、税務署長に承認を受ける必要があり、その承認を受けるのに時間がかかるので、期末ぎりぎりではなく、余裕をもって提出するようにしましょう。

 なお、期末までに申請書を提出した場合には、同日の翌日から同日以後1月を経過する日までの間に承認を受けた場合は、当該課税期間の末日においてその承認があったものとみなされます。

不適用届出書も忘れずに

単発の土地売却による承認は、原則としてその期限定の措置です。 そのため、土地を売った期の翌期には、速やかに「消費税課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出し、通常の計算方法に戻す手続きを行わなければなりません。この提出を怠ると、翌期以降の承認が取り消されるなどのトラブルに発展する可能性があるため、申請とセットで管理しておくことが不可欠です。

まとめ

土地を売却した年は、消費税の計算において思わぬ負担を招く可能性があります。土地の譲渡を予定している、または期中に土地を売却した事業者の方は、決算日を迎える前に早急に消費税のシミュレーションを行い、適切な手続きを進めることが重要です。

事前の申請が必要な手続きですので、この制度についてもっと詳しく知りたいという方は、お早めに小池税理士事務所までご相談ください。