会社を設立するときに知っておくとオトクなこと⑶~決算月はいつにするべき?~

今回は、法人を設立する際に気をつけたいポイントとして「決算月」の決め方について解説していきます。決算月なんて何月にしてもそんなに変わらないんじゃないかと思うかもしれません。しかし、これが場合によっては、その後の会社経営に大きな影響を与えることになったりします。あとで後悔しないように、最後まで読んで、ぜひ参考にしてみて下さい。

そもそも決算月って?

法人の決算月とは、事業年度の最後の月を意味しています。個人事業主の場合、決算月は12月と決まっていますが、法人の場合は、決算月を自由に設定することが出来ます。

日本の場合、決算月というと3月のイメージが強いと思います。令和4年度に国税庁が実際に行った調査では、3月決算が全体の18%と圧倒的に多く、続いて9月.12月となっています。

(国税庁「決算月別の普通法人数」)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/r03/R03.pdf

なぜここまで3月決算が多いかというと、日本は4月から新年度と捉えることが多く、それに合わせている会社が多いからでしょう。だからといって、3月決算がおすすめというわけではありません。あくまでご自身の会社の実情にあった決算月にするのがとても大切になります。では、どのようにご自身の会社の決算月を決めていくのが良いのでしょうか。次章以降で、それを4つのポイントに抑えて紹介していきます。

決算月を決める際のポイント

①繁忙期を避ける

まず、一つ目ができる限り繁忙期と決算月を被らせないようにするということです。

ただでさえ、本業の業務が繁忙期で大変なのに、それに加えて決算申告の業務まで加わることになります。業務量を考えただけでも恐ろしいですが、本業にミスが出たり、決算申告に間違いや漏れが出てしまう可能性が起こるので、なるべく避けることをおすすめします。

②売上が多い月にしない

①と少し似ている部分がありますが、売上が高くなると見込まれる月を期末にもってこないということです。忙しく決算申告業務が疎かになるというのもそうですが、期末に予想以上の売上があると、想定していた以上の税額になってしまう可能性があるためです。これがもし、期首に予想以上の売上があがるとすると、そこから決算まで時間的に余裕が出来るため、その後の動きを観察しながら、充分な節税対策を行うことができます。

③資金繰りから逆算する

お金が潤沢にある月を、決算月から2カ月後になるように設定しましょう。法人の場合、決算月から2カ月以内に申告をする必要があり、利益が大きければ大きいほど、支払う税金も高くなります。

そのため、決算月から2か月後に仕入れや外注等で、大きな支払い等があると資金繰りが厳しくなり、税金をそもそも支払えなくなるかもしれません。

そういった意味でも②で解説したように、売上の多い月を期首にもってくると、資金繰り的にも楽になると思います。

④消費税の免税期間を考慮する

最後に、消費税の免税期間を考慮して、消費税免税の恩恵を最大限受けられるようにしましょう。資本金1,000万円未満の法人の場合、最大2年間は、消費税の納税義務が免除になることがあります。ただし、決算月をいつにするかで、この2年間が短くなる可能性があるため、注意が必要です。

例えば、令和6年1月に会社を設立した場合を考えてみましょう。

【例1】3月決算にした場合

第1期 令和6年1月~令和6年3月 (3ヶ月)

第2期 令和6年4月~令和7年3月 (12ヶ月)

⇒合計で15ヶ月、消費税の納税義務が免除されます。

【例2】12月決算にした場合

第1期 令和6年1月~令和6年12月 (12ヶ月)

第2期 令和7年1月~令和7年12月 (12ヶ月)

⇒合計で24ヶ月、消費税の納税義務が免除されます。

以上のように、決算月によって、消費税の免税期間に大きく差が出てくることがあるため、基本的には設立した月の前月を決算月にすると消費税としては恩恵を受けることができます。

 ただし、売上高等の金額によっては、免税期間が変わってくることもあるため、税理士等の専門家に相談されることをおすすめします。さらに現在では、インボイス制度も始まり、設立直後から課税事業者になる場合も増えているため、その場合、このポイントは考慮しなくても良いかと思います。

決算期は後からでも変えられる?

想定していた繁忙月が、始まってみたら違う月だった。資金繰りの問題で他の月の方が良かった。等の理由で決算月を途中で変更したい場合もあると思います。結論から言えば、決算月は後からでも変更可能です。具体的には、定款変更や届出の提出をすれば、変更することができます。

 ただし、事業年度を1年以上にすることはできないため、決算月を変更すると、その期だけ事業年度が1年未満になり、1年間で2回決算申告をする必要が出てくるため、事務負担が増大してしまうので、注意が必要です。(2年目以降は、通常通り1年に1回の決算申告になります。)

まとめ

決算月はあとから変更することは可能ですが、今回紹介した資金繰りや税金などのことから考えて、最初に適切な決算月にすることで、その後の会社経営を順調にすることが出来ると思います。会社を設立するとなると、しなくてはならないことがたくさんあり、決算月のことまで手が回らない。という人もいるかもしれません。そういった場合はお近くの専門家に相談するのも手だと思います。

小池税理士事務所は、町田市を拠点としており、これまでも多くのスタートアップ会社の設立をサポートしておりますので、ご不明点やご相談したいことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。