起業・開業時のお役立ち情報(1)~役員報酬の金額はどうやって決めれば良い?~

役員報酬とはその名の通り、役員に支払う給与であり、会社を設立した場合は設立後3ヶ月以内に、自分で決める必要があります。

役員報酬をいつでも自由に変更できてしまうと、会社側が期末に役員報酬額を変更し、納税額を調整することが可能になってしまうため、役員報酬額の設定には従業員の給与とは違ったルールがあります。

まず1つ目は事業年度を通じて一定であること。2つ目は役員賞与を支払う場合は事前に税務署に届出をすることです。

この2点を守らない限り、経費に計上することが出来ず、無駄な税金を支払うことになりかねません。

このような不利益を受けないためにもまず役員報酬を支払う際の2つのルールを守ることが大切です。

ルールを知った上で、次は役員報酬をいくらに設定するかです。

役員報酬の金額の考え方

生活費から決める

役員報酬の金額の考え方は色々ありますが、ここではポイントを3つに絞ってお伝えします。

まず1つ目は生活費から決める。

自分が生活をするうえで必要な手取り金額を設定し、そこから控除される社会保険、所得税、住民税などを加味して役員報酬を設定するやり方です。

設立当初はどのくらい売上が見込めるか予測できないこともあるので

まずは欲しい金額から役員報酬を設定して、その金額から目標の売上高を決めるのも

一つの手段です。

利益から決める

2つ目は会社に残すべき利益から決める。

今期会社でどのくらい利益を出したいのか、まずは目標の利益を設定します。

そして、売上、粗利、経費を予測すると、どのくらい役員報酬を計上できるのかが

わかるのでそこから役員報酬を決定する方法です。

例えば、今期の利益目標が1,000万円だとします。年間の売上が1億円、原価4000万円、経費4000万円だと予測すると、1億円−4000万円―4000万円=2,000万円の利益が残ります。今期出したい利益が1,000万円なので2,000万円−利益1000万円=1,000万円となります。 予測通りに目標達成すれば役員報酬を1,000万円で計上しても、利益が1,000万円残ることになります。

税率から決める

これは社長個人の税負担と法人の税負担を合わせて一番税負担を軽くする役員報酬の決め方です。

まず、この決め方を実行するためには、所得税と法人税について知らなくてはなりません。

所得税は個人の所得(役員報酬)について課せられる税金、法人税は株式会社や合同会社などの法人の事業活動で得た所得に課せられる税金です。

そして所得税は、所得が上がるにつれて税率も上がっていく仕組みいわゆる累進課税なのに対して、法人税の税率は会社の規模や法人の種類によって異なりますが一定税率となります。

下の表をご覧ください。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円

これは個人の所得に対して課せられる所得税率と控除額を、年収別に一覧にしたものです。

所得が大きくなるほど税率が上がっていることが分かります。

次に法人税についてです。

会社の資本金の規模や課税所得額によって異なる場合もありますが、現行の税法上では基本的に23.2%が最高税率となります。ちなみに中小企業においては、各事業年度分の年800万円以下の所得金額の部分については、税率が15%に軽減されています。

ちなみに、法人税率23.2%の負担を所得税に置き換えてみると、「6,950,000円超~9,000,000円以下」の年収帯に課される税率とほぼ同じです。 つまり、900万円を越える役員報酬を支給する場合は、税率だけで見ると法人税の方が所得税よりも税率が低くなります。逆に役員報酬が695万円以下の場合には、法人税の方が所得税よりも税率は高くなります。

まとめ

先ほども述べた通り、会社の規模で法人税率が異なりますので、税率の違いのみで個人・法人の負担の大きさを比較した結果が全てではありません。あくまで個人・法人の税制度を理解するための比較であることに留意してください。 このように、適切な役員報酬の金額については、会社の売り上げ、利益額、役員の納税意識、利益への貢献度合いなど、会社が置かれている状況により様々です。判断が難しい部分もあるので、詳細のご質問やご相談は、東京都町田市を拠点とする小池税理士事務所までお問合せください。