会社を設立するときに知っておくとオトクなこと⑵~資本金はいくらにすれば良い?~
前回の記事「株式会社と合同会社はどっちにするべき?」では、それぞれの会社形態の違いについて触れましたが、今回は「資本金」について解説していきます。実は、資本金の額によって、事業活動や税務的に大きな違いが出てくることがあります。 実際には、どんな違いが出るのか、何に注意して資本金の額を設定するのが良いかを解説していきますので、是非最後まで読んで参考にしてみてください。
資本金とは?
「まずそもそも資本金って何?」と思う方もいると思います。会社法第445条第1項で、資本金とは「設立または株式の発行に際して株主となる者が、当該株式会社に対して払込みまたは給付をした財産の額とする」と定められています。
つまり資本金とは、会社を設立する際に、出資者から払い込まれたお金のことで、事業をする上で元手となるものです。2006年までは、株式会社を設立するためには1,000万円以上の資本金が必要でしたが、法律が変わり、今では1円から会社を設立することが可能になっています。
参考までに紹介すると、2022年5月に公表された「令和3年経済センサス‐活動調査 / 速報集計 / 企業等に関する集計」では、中小企業の資本金で最も多いのは、300万円以上500万円未満でした。
資本金の額を決めるときのポイント
資本金の額を決定する際、いくつかのポイントを考慮する必要があります。最初にも説明した通り、資本金の額によって、その後の事業活動に影響を及ぼすことがありますので、最初が肝心です。
①初期投資と運転資金から設定する
会社の設立当初から、事業を軌道に乗せ、売上を順調に伸ばしていくのは中々難しいのではないかと思います。更には、初期投資として多額の支出をすることもあると思います。こういったケースにも対応できるように、資本金を、設立から3か月~半年間の間にかかってくる費用の金額にしておくと安心できると思います。
ただし、ここで気を付けなれなければならないのが、多くの場合、会社設立時の資本金は経営者が出資することになると思います。そうなったときに、一度資本金として会社に入れたお金は、個人的に使うことは出来なくなります。ですので、ご自身の生活費も考えた上で資本金を設定しなければなりません。
②信用度の指標になる
前述した通り、資本金が1円でも会社を設立することは可能です。ただ、あくまでも可能というだけであって、おすすめはしません。例えば、資本金1円の会社と資本金500万円の会社があるとして、他の条件が同じだった場合、どちらの会社と取引したいでしょうか?特別な事情がない限りは、多くの人が資本金500万円の会社を選ぶと思います。これは取引先の話だけではなく、金融機関からの評価も同じです。
金融機関等から融資を受ける場合、資本金が低いとそれだけ返済能力も低いのでは?と判断されてしまい、不利に影響することがあります。また、日本政策公庫が行っている創業融資には、融資希望金額の10分の1以上の自己資金を用意できるという条件があります。つまり、資本金が少ないと借りられる融資の金額にも影響が出てしまうのです。
③許認可の条件がある
業種によっては、許認可を取得しなければならない場合があり、以下のような業種はその要件に資本金の額が設定されていることがあります。
・建築業許可 500万円以上(法人1期目の場合)
・有料職業紹介 500万円以上(法人1期目の場合)
・人材派遣業 2,000万円以上(法人1期目の場合)
他にも資本金が許認可の条件になっている業種があるため、もし設立予定の事業に許認可が必要な場合は、予め調べておく必要があります。
④税金の額が変わる
資本金の額によって、消費税・法人税・法人住民税の均等割・登録免許税に影響が出てきます。
・消費税
法人であれば、設立から2年間は消費税が免税になる可能性がありますが、資本金が1,000万円を超える場合は設立初年度から消費税が発生してきてしまいます。
ただ、2023年からインボイス制度が始まり、消費税の免税事業者でも課税事業者にならざるを得ない場合も増えているので、その場合は、気にしなくて良いでしょう。
・法人税
資本金が1億円以下であれば中小企業に該当し、資本金が1億円を超える企業と比べると法人税の税率が低く設定されています。ちなみに、資本金が1億円以下で、その事業年度の所得が800万円までの場合は、法人税の税率が15%になるため、標準税率23.2%と比べると、それだけでも大きな節税効果があると言えるでしょう。
(参考:国税庁HP「No.5759 法人税の税率」)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5759.htm
・法人住民税の均等割
法人住民税の均等割は、資本金の額と従業員の人数によって税額が変わってきます。具体的な金額はお住いの都道府県や市町村によって変わってきますが、資本金1,000万円以下だと法人住民税の均等割を最低金額にすることが出来ます。
・登録免許税
登録免許税とは、登記や登録等を受ける場合にかかってくる税金です。会社を設立するときにもこの登録免許税が発生しますが、資本金の額によって、税率が変わってきます。
株式会社の場合は資本金×0.7%と15万円のいずれか低い方の金額で、合同会社の場合は資本金×0.7%と6万円のいずれか小さい方の金額で判定されます。ですので、株式会社であれば資本金が約2,142万円、合同会社であれば資本金が約857万円を超える場合は、登録免許税が高くなってしまうため、注意が必要になります。
(参考:国税庁HP「No.7191 登録免許税の税額表」)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm
ちなみに、株式会社を設立する際には、公証役場で定款の認証を受けるのですが、その際に支払う手数料も、資本金の額によって変動します。
(資本金の額が100万円未満:3万円、100万円以上300万円未満:4万円、300万円以上:5万円)
また今回紹介した以外にも株式会社と合同会社には違うポイントがあり、会社設立の際に迷ってしまう所です。過去の記事で詳しく解説しているので、興味のある方は是非そちらも読んでみて下さい。
「会社を設立するときに知っておくとオトクなこと⑴~株式会社と合同会社はどっちにするべき?~」
まとめ
会社を設立するにあたっては、今回解説したように事業活動や税金等のことを考慮しながら、資本金を決定する必要があります。中小企業の場合であれば、資本金は基本的に、1,000万円以下にするのが良いと思います。許認可が必要な業種であれば、それも考慮しなければなりませんので、不安な場合は専門家に相談しながら、会社設立を進めていくことが大切です。
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