【町田市の税理士が解説!】経営セーフティ共済とは?~2024年の改正点とその影響について
中小企業の経営者にとって、取引先の倒産は大きなリスクです。そのリスクを軽減するための制度が「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」です。本記事では、経営セーフティ共済の概要と、2024年10月に施行される改正点について詳しく解説します。
経営セーフティ共済の概要
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐために、中小企業が加入できる共済制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しています。
◆主な特徴
1,無担保・無保証人での借入れ
取引先が倒産し、売掛金の回収が困難になった場合、無担保・無保証人で共済金の貸付けを受けられます。貸付限度額は「回収困難となった売掛金債権等の額」または「納付された掛金総額の10倍(最高8,000万円)」のいずれか少ない方です。
2,掛金の損金算入
掛金月額は5,000円から20万円まで自由に設定でき、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費として全額算入できます。
3,解約手当金の受取
掛金を12か月以上納めていれば、自己都合で解約しても掛金総額の8割以上が戻り、40か月以上納めていれば全額が戻ります。ただし、12か月未満での解約は掛け捨てとなり、
また、戻ってきた金額は法人の場合は益金、個人事業主の場合は収入になってしまうため注意が必要です。
4,一時貸付制度
取引先の倒産がなくても、事業資金が必要な場合、解約手当金の95%を上限として借入れが可能です。この貸付けは無担保・無保証人で、低金利で利用できます。
加入条件、加入方法
◆加入条件
経営セーフティ共済に加入できるのは、以下の条件を満たす中小企業者、個人事業主、または一定の組合です。
1. 事業継続年数
加入申込時点で、1年以上継続して事業を行っていることが必要です。法人化してから1年未満でも、個人事業主としての事業継続期間が1年以上であれば加入可能です。
2. 業種ごとの資本金または従業員数の要件
業種ごとに、資本金または常時使用する従業員数のいずれかが以下の基準を満たす必要があります。
業種 | 資本金または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
※資本金または従業員数のいずれか一方が基準を満たせば加入可能です。
出典:共済サポートnavi「経営セーフティ共済の加入資格」
3. 加入できないケース
以下のような場合は、加入が認められません。
・開業から1年未満の事業者
・医療法人、NPO法人、外国法人など
・事業の経理内容が不明確な場合
・所得税や法人税を滞納している場合
・既に共済契約者である場合
・共済金や一時金の貸付を不正に借り入れようとした日から1年未満である場合
◆加入方法
経営セーフティ共済への加入手続きは、以下の方法で行うことができます。
1. オンラインでの手続き
中小企業基盤整備機構の公式ウェブサイトから、オンラインで契約申込書を作成できます。必要事項を入力し、申込書を印刷して提出することで手続きが完了します。
2. 窓口での手続き
最寄りの商工会、商工会議所、または金融機関の本支店(代理店)で加入手続きを行うことができます。必要書類を持参し、窓口で手続きを進めてください。
3. 必要書類
加入手続きには、以下の書類が必要です。
・契約申込書
・登記事項証明書(法人の場合)
・確定申告書の写し(個人事業主の場合)
・印鑑(法人の場合は代表者印)
詳細な手続きや必要書類については、公式ウェブサイトや窓口でご確認ください。
2024年10月からの改正点
2024年10月1日以降、経営セーフティ共済の税制上の取り扱いに変更が加えられました。具体的には、共済契約を解約し、再度契約を締結(再加入)した場合、解約の日から2年を経過する日までの間に支出する掛金については、損金または必要経費に算入できなくなりました。
◆改正の背景
経営セーフティ共済は、本来、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度です。しかし、近年、一部の事業者が節税目的で短期間に解約と再加入を繰り返すケースが増加していました。例えば、掛金を最大限まで積み立てた後、解約して解約手当金を受け取り、再度加入して再び掛金を損金算入するという方法です。このような利用は、本来の制度趣旨から逸脱しており、制度の健全な運用を損なう恐れがあると判断されました。
◆改正による影響
1,節税効果の制限
改正により、解約後2年間は掛金が損金算入できなくなるため、節税効果を得るためには2年間の空白期間が生じます。そのため、節税目的での短期的な解約・再加入のメリットは大きく減少します。
2,資金繰りへの影響
解約手当金を受け取った後、再加入しても2年間は掛金を損金算入できないため、資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。特に、解約手当金を受け取った年度に多額の課税所得が発生する場合、税負担が増加することになります。
まとめ
経営セーフティ共済は、支払った掛金が経費になりその分税負担が減りますし、万が一の時には貸付を受けることができるため、中小企業にとって有用な制度ですが、2024年10月からの改正により、節税目的での短期的な解約・再加入が制限されました。
今後は、制度本来の目的である「連鎖倒産の防止」に焦点を当て、長期的な視点での活用が求められます。制度の変更点を正しく理解し、自社の経営戦略に適した活用方法を検討しましょう。