【町田市の税理士が解説!】役員借入金とは?~メリット・デメリットから解消方法まで徹底解説
中小企業の決算書を眺めていると、負債の部にしばしば登場するのが「役員借入金」です。「社長個人のお金を会社に入れただけだから」と軽く考えられがちですが、実は税務調査での指摘リスクや、将来の相続トラブルの種になるなど、放置すると非常に厄介な性質を持っています。
本記事では、役員借入金の基礎知識から、そのメリット・デメリット、そして賢い解消方法までを詳しく解説します。
役員借入金の基礎知識
役員借入金とは、文字通り「会社が役員(主に社長やその家族)から借りているお金」を指します。多くの場合、以下のようなシチュエーションで発生します。
①資金繰りの補填
売上の入金前に支払いが重なり、社長が個人の預金から会社口座に現金を振り込んだ。
②経費の立て替え
社長が個人のクレジットカードや現金で会社の備品を購入し、会社がその精算を後回しにしている。
③役員報酬の未払い
資金繰りが厳しいため、帳簿上は役員報酬を計上しているが、実際には社長に支払わず、会社に据え置いている。
また、混同されやすい言葉に「役員貸付金」があります。
・役員借入金:会社が役員から「借りている」(会社にとっては債務)
・役員貸付金:会社が役員に「貸している」(会社にとっては資産)
役員貸付金は「公私混同」として銀行や税務署から厳しく見られますが、役員借入金は一見「社長が会社を助けている」図式に見えるため、軽視されやすい傾向にあります。
役員借入金のメリット
会社経営において、役員借入金にはいくつかの実務的なメリットが存在します。
①迅速かつ柔軟な資金調達
銀行融資を受けるには、審査や書類準備に数週間から数ヶ月かかります。
しかし、役員借入金なら社長が決断した瞬間に資金を投入できます。
担保も保証人も不要な、最もスピーディーな資金調達手段です。
②無利息でも税務上の問題になりにくい
通常、第三者や銀行からお金を借りれば利息が発生します。
しかし、役員借入金については、会社側が役員に利息を支払わなくても、税務上「受贈益(利益)」として課税されることはありません。
会社にとってはコストゼロで資金を使えるメリットがあります。
(※逆に、役員に利息を支払う場合は、役員個人の雑所得となり確定申告が必要になる点に注意が必要です)
③自己資本に近い扱いを受ける場合がある(資本的劣後ローン)
銀行から追加融資を受ける際、負債が多いと審査に不利になります。しかし、役員借入金については「実質的には社長の資産であり、返済の優先順位が低い」とみなされ、自己資本の一部として評価(資本認定)してくれるケースがあります。
知っておくべき重大なデメリットとリスク
メリットがある一方で、役員借入金を放置し続けると、以下のような深刻なリスクを招
きます。
①相続税の課税対象になる
これが最大の落とし穴です。社長が会社に貸しているお金は、社長個人にとっては「貸付金という財産」です。もし社長が亡くなった場合、この役員借入金(貸付金債権)は額面通りに相続財産として評価されます。
例えば、会社が赤字で、社長が1億円を貸し付けていた場合、たとえ会社に返済能力がなくても、相続時には「1億円の資産」としてカウントされ、多額の相続税が発生する可能性があります。
②銀行からの評価が下がる可能性がある
メリットの項で「自己資本として評価される場合がある」と書きましたが、それはあくまで銀行との交渉次第です。何も対策をしていなければ、単に「負債が多い=財務内容が悪い」と判断され、格付けが下がる要因になります。
③税務調査でのチェック項目になる
あまりに金額が大きい、あるいは増減が激しい場合、税務署から「売上を除外して、社長のポケットマネーに見せかけて還流させていないか?」という疑いを持たれることがあります。
役員借入金を解消・整理する方法
増えすぎてしまった役員借入金は、計画的に減らしていく必要があります。代表的な手法を紹介します。
①役員報酬を減額し、その分を返済に充てる
社長の月々の役員報酬を下げ、その差額分を「借入金の返済」として支払う方法です。
・メリット
社長個人にとっては、返済金は所得税・住民税がかからない「非課税の現金」となります。社会保険料の削減にもつながります。
・注意点
役員報酬の変更は、期首から3ヶ月以内に行う(定期同額給与のルール)必要があります。
②債務免除(放棄)を受ける
社長が「会社への貸し付けを、もう返さなくていいよ」と放棄する方法です。
・メリット
貸付金が消滅するため、相続税対策として即効性があります。
・注意点 会社側に「債務免除益」という利益が発生します。会社に累積赤字(欠損金など)がない場合、この利益に対して法人税がかかってしまうため、実施のタイミングが重要です。
まとめ
役員借入金は、短期的には「会社を救済する便利なツール」ですが、長期的には「相続税を増大させ、財務健全性を損なう時限爆弾」になり得ます。
・今の自社の役員借入金はいくらか?
・そのうち、本当に返済できる見込みがあるのはいくらか?
・万が一、今社長に何かあったら相続税はどうなるか?
まずはこれらの現状把握から始めてみてください。
解消には時間がかかるケースが多いため、早めに計画的な出口戦略を立てることをお勧めします。

