【町田市の税理士がズバリ解説!起業・開業時のお役立ち情報③】社会保険加入の必要性~労働保険編~
前回のお役立ち情報②では、法人を設立した後に加入が必要である「社会保険」について詳しくお伝えいたしましたが今回は「労働保険」について説明をしていきます。
社会保険とは簡単に言うと『公的な保険』であり、図のように広義と狭義の意味があります。
この中の労働保険とは労働者の保護及び雇用の安定を図ることを目的とした、国が運営する社会保険制度になります。労働保険は労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を総称したものであり、保険給付は両保険制度で別個に行われますが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。労災保険は正社員、パート、アルバイトなど雇用形態に関わらず、賃金が支払われる労働者を一人でも雇っている事業場は加入が義務付けられており、雇用保険は1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上の雇用継続見込みがある労働者が加入対象となります。
労災保険とは
労災保険とは、業務上、あるいは通勤が原因でケガや傷病にかかったときに受けられる保険です。他の保険と異なる点は、労働者の保険料負担がない点です。それは、事業主に『安全配慮義務』という義務があり、文字通り労働者を安全に働かせる環境を整備しなければならず、労災保険加入もその一つとなります。
例えば労働者が業務上のけがなどで入院し、使用者が労災保険に入っていなかった場合を考えてみてください。そのかかった費用や生活費等は全て事業主が負担することになりますが、もし事業主に費用の支払い能力がない場合、負傷した従業員は十分な補償を受けることが出来ません。このような事態を防ぐために、事業主で保険料を出し合い、不測の事態の際にはそこから保険給付が受けられるようになっています。
労働保険に加入している会社全体で保険料を出し合い、保険事故が起こってしまった方に対して、その財源から保険給付を行う、つまり助け合いをしているわけです。
雇用保険とは
雇用保険はいわゆる労働者が失業した場合の失業手当が一番に頭に浮かびますが、それだけではなく実は幅広い保障をしています。例えば育児・介護のため休業した場合、また自らスキルアップのために教育訓練を受けた場合など幅広いシーンで保険給付を受けることができます。また、雇用保険は労働者への保障のみではなく、雇用保険加入事業者へも雇用を継続するための支援金などを支給しています。 雇用保険から支払われる給付は「求職者給付」「就職促進給付」「雇用継続給付」「教育訓練給付」の4つです。なお、雇用保険料は、労働者と事業主双方が負担します。
労働保険の加入手続きについて
労働保険の適用事業となると、原則として以下の流れで労働保険への加入手続きを行います。
①事業を行っている地域を管轄している労働基準監督署に対して「労働保険 保険関係成立届」と「労働保険概算・確定保険料申告書」を提出する。添付書類として法人の場合は「登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の写し1通」が必要となります。
② 労働保険番号の交付を受けた後、同じく事業を行っている地域を管轄している公共職業安定所で、雇用保険の加入手続きを行います。
その後、当該年度分の労働保険料を概算保険料として納付することになります。
労働保険料は業種によって異なりますが、一般的には労働者に支払う賃金の総額の見込額に保険料率を乗じて算出します。令和6年の保険料率は下記の通りです。
【労災保険料率】
https://www.mhlw.go.jp/content/rousaihokenritu_r05.pdf
【雇用保険料率】
https://www.mhlw.go.jp/content/001211914.pdf
労災保険や雇用保険への加入は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内に書類を提出する必要がありますので、対象となる労働者を雇い入れた場合は速やかに加入手続きをしましょう。
労働保険の特別加入制度とは?
労災保険は基本的に「労働者の保護」を目的としているため、事業主をはじめとする経営者やその家族については保険制度の対象外です。しかし、実際は家族経営の小さな会社や一人親方、一人社長のように業務の実態や、災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいと見なされる人であれば、一定の要件の下に労災保険に「特別加入」が認められるケースがあります。特別加入できる方の範囲は、中小企業を経営する「中小事業主等」、個人タクシーなど労働者を使用せずに事業を行う「一人親方」、特定作業従事者、海外派遣者の4種に大別されます。
労災への特別加入は任意で、労災保険料のほかに労働保険事務組合への委託手数料が必要になりますが、最近では建設現場で働く事業主や一人親方から、「労災保険に加入していないと現場に入れない」ということをよく聞きますし、事務処理を委託することによる事務負担の軽減という側面もあります。また令和6年11月からは「フリーランス」の方々も特別加入の対象になりますので、もしもの場合に備えて労災への特別加入も検討されてみてはいかがでしょうか?
まとめ
ここまで2回にわたり、社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(労災保険・雇用保険)についてご説明をさせていただきましたが、それぞれ加入要件は異なり、申請書類も申請場所も違うことから、従業員の入退社によってたくさんの手続きをしなければなりません。また、毎年行わなければならない算定基礎届や年度更新などもあるので、手続きを正確に行うためにも、事務負担を軽減するためにも専門家に委託をすることを検討してはいかがでしょうか?お困りごとは町田市の小池税理士事務所にぜひご相談ください。