「配偶者控除」と「専従者給与」って?~実際の数字を使ってシミュレーションすると、オトクなのはどっち!?~

配偶者控除・青色専従者給与・事業専従者控除の違い

まずは、この3つの制度(配偶者控除・青色専従者給与・事業専従者控除)がどのようなものなのかを説明していきます。

・配偶者控除とは

配偶者控除に関しては、年末調整のときに耳にしたことがある。という人もいるんじゃないでしょうか。

配偶者控除とは、一定以下の収入の配偶者がいる場合に、その配偶者の相手(納税者)が所得控除を受けられるといったもので、その年の12月31日時点で次の要件を満たしていれば、対象者となります。

・民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。

・納税者と生計を一にしていること。

・年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

・青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないことまたは白色申告者の事業専従者でないこと。

また、配偶者控除の控除額は納税者の所得金額によって異なるので、以下の一覧表を参考にしてみてください。

(参照:国税庁HP「No.1191 配偶者控除」)

・青色専従者給与とは

本来の所得税の考え方だと、家族への給与というのは、「同じ財布の中でただ資金が移動しているだけ」と見られるため、経費に計上することは出来ません。

しかし、以下の要件を満たすことで、家族に支払った給与を経費に計上できる「青色専従者給与」を適用することが可能になります。

・生計を一にする配偶者その他の親族であること。

・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

・原則、6カ月超の期間、事業に従事していること。

・「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出していること。

・給与の額が届出書記載内の金額で、かつ労務の対価として妥当であること。

届出の提出期限や要件を満たす必要がありますが、納税者の所得を圧縮できるため、支払う税金を減らすことが出来ます。

また、家族が受け取った給与はその方の所得になるため、金額によってはその方の税負担が増加するので注意が必要です。

・事業専従者控除とは

白色申告の場合には、1人年間最大86万円まで給与として経費にみなすことのできる「事業専従者控除」という制度があります。年間86万円までしか経費計上できない点がネックにはなりますが、「青色専従者給与」と違って、支給していなくても経費に出来るので、そこはメリットだと思います。「事業専従者控除」にも次のような適用要件があります。

・生計を一にする配偶者その他の親族であること。

・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

・6カ月超の期間、事業に従事していること。

ちなみに「事業専従者控除」を適用した場合も、その金額が家族の方の収入金額になります。

配偶者控除・青色専従者給与・事業専従者控除の併用はできる?

よく質問されるのが、「配偶者控除」・「青色専従者給与」・「事業専従者控除」の適用を併用出来ませんか?といったものです。もし併用が出来れば、扶養内で配偶者に給与を支給して、更に「配偶者控除」で控除額を増やせますよね。

結論から言えば、答えは「NO」です。併用は認められません。

先ほどの「配偶者控除」の適用要件にも書いてありますが、「青色専従者給与」や「事業専従者控除」によって所得を得ている場合には、「配偶者控除」を受けることが出来なくなっています。

配偶者控除と青色専従者給与はどっちがオトク!?

ではここからが本題ですが、この3つ「配偶者控除」・「青色専従者給与」・「事業専従者控除」では、どの方法がより節税効果が高いのでしょうか。

具体例を交えて計算していきます。

 <前提条件>

納税者の年齢が40歳未満で、年収500万円でこれにかかる経費が100万円。

確定申告は青色申告で行っている。

納税者本人は国民年金・国民健康保険に加入。

青色専従者給与を適用する場合は、配偶者に86万円支給。

今回の試算でいくと、支払う税金は「事業専従者控除」が一番高く、「青色申告特別控除」が一番安く済むという結果になりました。

あくまで概算ではありますが、数万円程度違いが出てきます。

なぜ「事業専従者控除」は、86万円の専従者控除があるのにも関わらず、「配偶者控除」よりも高くなったかというと、青色申告の特典である青色申告特別控除で最大65万円を控除することが出来るためです。

またもう一つ注目して頂きたいのが、国民健康保険料の金額です。

「配偶者控除」だけ、他と違って保険料が少し高いですよね?

国民健康保険料は所得に応じて保険料が変動します。そのため、給与額を経費計上して所得を圧縮できる「事業専従者控除」と「青色専従者給与」はその点から見ると、支出額を抑えることができます。

所得税額と国民健康保険料の合計支出額を比較してみると、次のようになります。

まとめ

今回の試算では、所得税額だけで見ると、「青色申告特別控除」が一番オトクで、国民健康保険を含めた全体の支出額で見ると、「事業専従者控除」と「青色専従者給与」がオトクという結果になりました。

ただ、今回の試算では、家族への給与を86万円で計算しています。

もし、支給額を年間38万円以下(約月3万円)に設定するのであれば、「配偶者控除」の方がオトクかもしれません。

また、「青色専従者給与」であれば家族への給与を86万円以上にすることも可能になり、より節税効果が高まります。

さらに、青色申告にはこの他にも多くの特典があります。それについて詳しく解説している記事がありますので、興味のある方は一度読んでみてください。

より詳しく知りたい方や自分の場合はどうすれば良いか気になる方は、町田市を拠点とする小池税理士事務所にお気軽にご相談ください。