これから開業する人必見!税理士が解説!個人事業主が開業する際にやっておくべきことリスト
開業届とは?
開業届の正式名称は、「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。
これは開業したときだけではなく、事務所の移転・増設・廃止をした際に税務署に出すものになります。
また、開業届は事業を開始した日(開業日)から1カ月以内に、税務署に提出をしなければなりません。人によっては、開業日があいまいな場合もあると思いますが、厳密には「事業の開始等の事実があった日」なので、お店をオープンした日や仕事を受注したタイミング等が考えられます。また、開業の準備を開始した日でも構いません。
開業届の提出は義務になっていますが、出さないことによって何か罰則があるというわけではありません。実際、開業届を出さないで事業を営んでいる人もいます。
(開業届を出さなくても、確定申告をした時点で開業したとみなされます。) ただし、開業届を出さないことによるデメリットがありますので、少し面倒ですが、開業したら必ず提出するようにしましょう。
開業届を出さないことによるデメリット3つ
・屋号で銀行口座が作れない
自分で事業を行う場合、事業用とプライベート用で銀行口座を分けたいと思う人も少なくないと思います。
ですが、屋号つきの口座を金融機関で作成する場合は、開業届を求められる場合が多く、口座そのものを開設できない可能性があります。
同様に、クレジットカードの作成をする時にも開業届を求められることがあるため、注意が必要です。
・小規模企業共済に加入できない
小規模企業共済とは、中小企業基盤整備機構が運営しており、小規模企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てていき、積み立てた金額に応じて将来、共済金を受け取ることができる制度です。
いわば「経営者や個人事業主の退職金制度」のようなものです。
これのメリットとしては、掛金として支払った金額を確定申告の際に全額所得控除の対象として計上することができるため、節税対策として多くの人が利用しています。
ただし、業種等によっては加入できないこともありますので、ご注意ください。
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/
(参照:中小企業基盤整備機構HP)
・補助金,助成金等の申請ができない
事業を開始してからすぐに、補助金や助成金等を受けて資金調達したいと考える方も少なくないと思います。しかし、開業して間もないと決算申告をしていなく、事業活動を証明できるものがないため、代わりに開業届の提出を求められることがあります。
実際、持続化給付金の申請の際に開業届の提出を求められ、どうすれば良いか相談にきた方も過去にいました。
ですので、開業届がないと補助金・助成金等が必ず受けられないわけではありませんが、特に開業してすぐに申請しようと考えている人は、開業届を出しておくことをおすすめします。
一緒に出すべき届出4つ
ここまで、開業届にフォーカスを当てて説明をしてきましたが、個人事業主として開業した際に一緒に出しておかないと、
「あの時一緒に出してれば。」と後悔する届出書が4つ存在します。
開業届と一緒に出すべき届出書の種類 | 提出期限 |
所得税の青色申告承認申請書 | 開業2カ月以内 |
青色事業専従者給与に関する申告書 | 開業2カ月以内 |
給与支払事務所等の開設届出書 | 開業1カ月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | なるべく早めに |
・所得税の青色申告承認申請書 (提出期限:開業してから2カ月以内)
「所得税の青色申告承認申請書」ですが、これから紹介する届出書の中で1番重要と言っても過言ではありません。
この届出書を出すことによって、「青色申告」で確定申告をすることが可能になります。
「青色申告」にすると作業が面倒くさくなると思う方もいると思います。たしかに「白色申告」と比べると、帳簿のつけ方等が複雑になります。
しかし、それ以上に「青色申告」にすることで大きなメリットにつながります。
例えば、最大で65万円もの控除を受けられる特別控除、赤字を次年度への繰り越しや家族への給与を経費計上できるなど様々な特典があります。
この他にも税制面での特典がありますので、期限内に「所得税の青色申告承認申請書」を提出することをおすすめします。
自分で開業届を出すという場合、税務署によっては一緒に勧めてくれるところもありますが、勧めてくれない所もありますのでくれぐれも忘れないようにしましょう。
・青色事業専従者給与に関する申告書 (提出期限:開業してから2カ月以内)
家族にお給料を支払う場合に必要となってくる届出書になります。
本来家族に支払ったお給料は経費として認められませんが、この届出書を出すことによって、経費として計上することが可能になり、税金を減らすことができます。
ただし、家族が青色専従者の要件を満たさなければなりませんのでご注意ください。
(例えば、青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族、年齢が15歳以上など)
・給与支払事務所等の開設届出書 (提出期限:開業してから1カ月以内)
従業員に給料を支払う場合には、源泉徴収義務というものが発生します。
源泉徴収義務とは、支払うお給料から源泉所得税をあらかじめ差引いて従業員に支給し、従業員の代わりに国に納めるというものです。
給与支払事務所等の開設届出書は、そういった手続きをする事務所を開設したことを知らせる届出書になります。
これを出すことによって、源泉所得税の納付書や年末調整の書類が届くようになりますので、忘れずに出しておきましょう。
ちなみに、従業員を直接雇用しておらず、外注さんしかいないという場合は提出の必要はありません。
・源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
先ほど、説明した「源泉徴収義務」ですが、基本的には翌月10日までに毎月支払わなくてはなりませんが、この届出書を出すことによって、源泉所得税の納付を半年に一回にすることができます。
この適用を受けるためには給与の支払人数が常時10人未満であることが条件ですが、事務的負担を大幅に減らすことが出来ますので、要件に合う方は検討してみてください。
(ただし、半年分を一回で納付することになるので、資金繰りにはご注意ください。)
まとめ
個人事業主として開業するのは法人よりも簡単ですが、それでも青色申告承認申請書のように早めに出しておいた方がいいものが結構あります。
本業の売上をいち早く上げていきたい時期で大変だと思いますが、この記事を参考に余裕をもって手続きを進めることをおすすめします。
開業にあたってご不明な点やお悩み等ございましたら、お気軽にご相談ください。