創業計画書の書き方(1) ~創業に懸ける熱意が大事です!~

はじめに

新たに事業を始めようとしたけどお金が足りない、今は大丈夫だけどこの先の資金繰りに不安がある…創業したばかりだと、このようなお悩みから創業融資を検討する方も多いと思います。

しかし、いざ創業融資を受けようと思ったら、創業計画書に何をどう書いていいかわからないという方もやっぱり多いです。

そこで、今回は創業計画書の書き方について解説していきます。

ただ、具体的な内容になると業種や事業規模によってそれぞれ異なるので、一般的な考え方としての解説になります。

フォーマットは日本政策金融公庫の創業計画書になりますが、その他の金融機関でも必要なポイントはそう大きく変わりません。

ちなみに、日本政策金融公庫のHPには、創業計画書の記入例が業種ごとに公開されています。

まずはこちらを参考にしながら、創業計画書を書いてみてもいいでしょう。

https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

(参照:日本政策金融公庫HP 各種書式ダウンロード)

創業計画書の全体像

みなさんは公庫の創業計画書をご覧になった事はありますか?

用紙いっぱいに記入する所があって大変そうって思われる方もいれば、たった1枚だけ?と思われる方もいると思います。

どちらにしても、作るべき創業計画書はこれ1枚です。

たまにこの創業計画書1枚だと不安だからと、補足資料をいっぱい作られる方もいらっしゃいますが、そういった資料が無いとダメなんて事はありません。

創業計画書には書ききれない事や、あくまで計画書に書いてある事の補足情報として別紙をつける分にはわかりやすくなりますが、敢えて分厚いプレゼン資料のようなものを作る必要はありません。

また、この創業計画書は公庫のHP、記入例と同じページからダウンロードできるのですが、エクセルでダウンロードできることから、字が汚いからエクセルで入力した方が良いか?とか、パソコン使えないから手書きでも大丈夫か?と言ったご質問を頂く事があります。

結論から申し上げると、どちらでも大丈夫です。 字の汚さやエクセルを使えるかどうかで、融資の審査は変わりません。お好きな方法で創業計画書を作成してください。

それでは創業計画書の書き方を解説していきますが、今回は左側半分を解説致します。

創業の動機

ここからは項目ごとに解説していきます。

まずは左上、一番最初の項目ですが、創業の動機という欄があります。

そのままですが、ここではなぜ創業しようと思ったのか、その創業に至った経緯や創業に懸ける想いを書いて頂きます。

審査する上で必要なのか?と思われるかもしれませんが、創業に懸ける熱意というのは想像以上に大事なのです。

なんとなく独立してとりあえずやってみますという方より、お客様を笑顔にするためにこんな風に仕事をしたいんです!という方のほうが、事業がうまくいきそうではないですか?

当然ですが、公庫としてはお金を貸す事がゴールではなく、ちゃんと回収できるかどうかというのが非常に重要です。

つまり、ちゃんとお金を返せるかどうか、その一つの指標として創業への意気込みや本気度というのも見られています。

創業にあたってどんな準備をして、何を目的にするのか、どういう仕事をしたいのか、しっかり伝えていきましょう。

経営者の略歴等

こちらでは、今までどんな仕事をしてきたかを書いて頂きます。

以前、創業融資を受けられない!?日本政策金融公庫の創業融資を受けるために大切な事とは? でも書きましたが、創業する業種の経験があるかというのは非常に大事な要件になります。

その事業の知識がある、そして実際に経験してその業種・業界の事を理解して準備している方は、まったくその事業の経験が無い方と比べて、事業がうまくいく可能性は格段に上がると見られます。

創業する業種の経験がちゃんとあるかどうかを見られるので、しっかり書きましょう。

ただ入退社を書くだけでなく、役職や担当業務、その会社でどんな事をしたかを書くと、さらに理解しやすくなるので、良いと思います。

学歴等を見たいわけではないので、職歴が書いてあれば十分です。ただし、専門学校で習得した技術を活かした仕事をするなど、創業する仕事と関係があれば記載するとプラスになるかもしれません。

また、信用情報等の調査で職歴を見られる事もあります。嘘は書かないようにしましょう。

その他、取得資格や知的財産権等という欄があります。

こちらも、創業する事業に関係のある資格等があれば積極的に書きましょう。反対に事業に関係のない資格等は、書かなくても問題ありません。

取扱商品・サービス

私がお客様に直接指導すると、よく何を書いていいかわからないと言われる事が多いです。

ですが、皆さんの頭の中にあるイメージを具体化する事で、書ける事はたくさんあると思います。

取扱商品・サービスについては、読んだままになりますがどんな仕事をするのか、何を売るのかを具体的に書いてください。

さらにそれぞれの商品・サービスごとに単価等も記載しているとより良いでしょう。

飲食店やサービス業の方などは、別紙として仮でもいいのでメニュー表を添付するとより具体的にイメージできます。

セールスポイントは皆様一番悩まれる事が多いかもしれません。

例えば、まったく新しい事業を始めない限り、周りに同業他社さんはいっぱいいると思います。そういった他社に負けない部分、うちはこんな事ができるんだとか、他の人は苦手にしてるけど自分はこれが得意なんだというアピールポイントがあれば、積極的に書いてみてください。

また、他社にはできないけど自分には安く仕入れる独自のルートがある、だからお客様にも安く提供できるんです、というのもセールスポイントの一つでしょう。

商品・サービスとそのセールスポイントが書けたら、次は販売ターゲット・販売戦略です。

ここでは、どんなお客様にどうやって営業するかというのを書いて頂きます。

どのような客層をメインにするのか、例えばターゲットは若い方なのか年配の方なのか、男性が多いのか女性が多いのかとか、その商品・サービスを求める方はどういう方なのか、具体的に書きましょう。

そしてそのターゲットにどうやって売り込むのか。若い方向けにXやインスタ等のSNSで発信していくのか、ホームページや広告で宣伝するのか、営業は足で稼ぐ!といったように自らお客様に出向いて売り込むのかなど、こちらも具体的に書いてください。

この項目の最後は、競合・市場など企業を取り巻く状況です。

何を書いていいかわからないという声もよく聞きますが、その事業は今需要が増えているのか減っているのか、同業他社が増えているのか減っているのかといった状況や、創業するエリアで特筆する事が何かあればそれも書いてください。

ちょっと前であれば、コロナ禍で落ち込んでいた需要がまた復活してきたといったような書き方をされる方も多かったです。このようにポジティブな内容ですと印象も良くなるでしょう。

この項目では、これから始める事業でどうやって売上を上げていくのか、公庫の担当者さんが具体的にイメージできるように伝える事が大事です。それを意識しながら書いてみましょう。

取引先・取引関係等

この項目では、どんな相手と取引をするのか、具体的に決まっていれば書いて頂きます。

販売先は売上、お金をもらう相手です。飲食業やサービス業などBtoCの事業を行う方は。「一般顧客」といった書き方で十分です。

仕入先は商品を買う相手です。私たち税理士のように仕入れるものが無い場合には、空欄で構いません。

外注先についても同様で、特に外注にお願いするような予定がなければ、空欄で大丈夫です。

この販売先・仕入先・外注先につきましては、あくまで予定でも構いませんが決まっていればちゃんと書きましょう。

例えば販売先については、たくさん決まっていればいるほど、早い段階から売上が上がる事が見込まれます。創業計画書に書ききれない場合には、別紙で取引先リストなどを作って提出するのも良いです。

ただ、取引先がたくさんあった方がいいからといって、嘘は書かないでください。審査する際に、その会社が実在する会社かどうかとか、細かく調査されるケースもよくあります。

取引先が少ないから審査が不利になるというわけでもないので、嘘偽りなく誠実に書きましょう。

また、それぞれのシェア率や掛取引(即金ではなくてまとめて後払い)の割合、回収・支払の条件も書いて頂きます。

こちらは実際に事業が始まってから資金繰りがどうなっていくのかを確認するのに大事です。

仕入・外注の支払いはすぐにしなければならないが、売上の入金はだいぶ先になるといったケースだと、資金がショートしやすいです。売上や経費といった損益だけでなく、お金の出入りなどの資金繰りも融資を受ける際には非常に大事なポイントなので、こちらもしっかり書きましょう。

この項目の最後の行には、人件費の支払という欄もあります。 社長も含めた役員や従業員のお給料は何日締めで何日払いにするのか、賞与を支給するならいつ支給するのか、あくまで予定で構いませんので、こちらも資金繰りを把握するのに必要なのでしっかり書きましょう。

まとめ

今回は創業計画書の左側半分の書き方を解説致しました。

右側半分については、また別の記事で解説致します。

右側に比べて文章で書く事が多く、大変だなといった印象を持つ方もいるかもしれません。

ですがこの創業計画書を作るという事は、創業融資を受けるために必要なだけではなく、皆さんの頭の中のイメージをアウトプットして頂き、より計画を具体化するためにも非常に大事な作業だと思います。

もちろん皆さんそれぞれ始める事業の内容や環境が違ったりして、ここに書いてあることだけじゃわからない、自分の場合はどうすればいいんだという事もたくさんあると思います。

そんなときはぜひ小池税理士事務所に直接お問い合わせください。