【2025年から適用開始!】超富裕層への課税が強化される⁉~「ミニマムタックス」とは~

令和7年分(2025年分)の所得税から、いわゆる超富裕層への課税を強化する「ミニマムタックス」がスタートします。

対象となる方は一部の高所得者に限られると見込まれています。ただ、M&Aや自社株式の売却など、一度の取引で多額の所得が発生する場合には、思わぬ形で対象になる可能性があります。 今回は、制度の背景から仕組み、対象となりやすいケースを解説していきます。

ミニマムタックスとは?

前提として、日本の所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる超過累進課税を採用しており、5%から45%までの7段階に区分されています。

ところが、株式や不動産の譲渡所得は分離課税となり、税率は一定となります。

そのため、金融所得が中心の富裕層は、給与所得者よりも実効税率が低くなる逆転現象が発生していました。

財務省の資料によると、合計所得が1億円を超える高所得者では、金融所得が全体の6割超を占め、結果的に税負担率が下がることが確認されています。

さらに社会保険料の負担まで含めると、低所得層よりも負担率が低い状況にあることが問題視され、「1億円の壁」と呼ばれています。

この不公平を是正し、税負担の公平性を確保するために導入されたのが「ミニマムタックス」です。この制度は、極めて高額な所得に対して、最低限の税負担を設定するというものです。令和5年度税制改正で決定され、令和7年分から適用されるため、令和8年3月に行う確定申告から気を付けなければなりません。

どのように計算するのか

次の2つの税額を比較し、②が①を上回る場合、その差額を追加納税します。

➀通常の所得税額

②(合計所得金額 − 3.3億円) × 22.5%

 つまり、金融所得の分離課税で通常の税額が低く抑えられていても、最低22.5%程度の負担が必要になる仕組みです。

(参照:財務省HP「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/publication/brochure/zeisei23/01.html

 なお、合計所得金額には、申告不要制度を選んだ株式配当等も含め、預貯金の利子など源泉分離課税で完結する所得、NISA口座など非課税対象の所得、スタートアップ再投資による非課税所得などは除外されて計算されるため、注意が必要です。

どのくらいの所得で対象になる?

2020年分の申告データを用いて機械的に試算したところでは、年収がおおむね30億円以上の場合に対象になると見込まれるといいます。ただし、計算式から考えると、すべての所得のうち、給与・事業所得が多い場合は30億円以上に、上場株式の譲渡益など分離課税が多い場合は、10億円程度の所得でも追加課税の対象になることがあるため、個人ごとで「ミニマムタックス」に該当するかを計算する必要があります。

▷対象になりやすいケース

・M&Aや持株会社化のために自社株式を売却する場合

・相続税納税資金の確保のため、不動産や株式をまとめて売却する場合

・特定口座(源泉徴収あり)で多額の譲渡益・配当収入が発生する場合

日常的に超高額所得がある方だけでなく、一度の資産売却で対象となる可能性がある点がポイントです。

まとめ

「ミニマムタックス」は、金融所得が中心の超富裕層に対して最低限の税負担を求める制度です。「自分は関係ない」と思っていても、M&A・自社株式の売却・大規模な資産売却など、一度の取引で対象になるケースも少なくありません。

 ご自身だけで判断するのは不安だという方は、お早めに最寄りの税務署や税理士に相談してみましょう。